プロ野球のスコアラーの役割 重要な対戦チームのデータ分析に必要

キャッチャー

情報機器と情報技術の発展に伴い、現代のプロ野球では対戦するチームのデータを収集・分析して、戦略を練ることが重要視されています。
その役割を担っているのが、スコアラーです。

プロ野球の各球団には5人から8人ほどのスコアラーが在籍していて、「チーム付きスコアラー」「先乗りスコアラー」「先々乗りスコアラー」に分かれています。チーム付きスコアラーは、対戦している相手チームと自チームの選手を観察してデータを収集し、リアルタイムで情報を提供します。
先乗りスコアラーは次のカードで対戦するチームの試合を、先々乗りスコアラーは次の次のカードで対戦するチームの試合を観戦してデータを収集・分析して報告する役割があります。

スコアラーは定量的なデータの収集の他に定性的なデータの収集と分析を行います。定量的なデータとは、「このバッターは初球から打つ確率が70%である」とか「このピッチャーは初球に直球を投げる確率が20%である」といったデータで、スコアラー以外の誰が見ても同じデータになります。

球場

重要なのは定性的なデータで、相手チームの選手の癖や欠点を見抜くのが重要です。例えば、投手の場合は変化球と直球を投げる時のフォームの違い、打者の場合は変化球と直球への対応の違いといった特性を見つけることで、自チームの戦略に役立てることができるのです。

試合を観戦して収集・分析したデータは、すぐにレポートにまとめて報告しなければなりません。ナイターの試合の場合は日付が変わってからの報告になることも珍しくありません。

観客の目にはつかない地味でハードな役割ですが、データが重要視される現代野球ではスコアラーの力は必要不可欠と言えるでしょう。

プロ野球とメジャーリーグ「最強打者の打順」

ホームベース

日本のプロ野球とアメリアのメジャーリーグベースボールとは、似て非なるものであると言われることがありますが、両者を比較した場合に違いが顕著となるのが最強打者に任せる打順についての考え方についてです。

まず、プロ野球においては、伝統的に長打を打てて、ハイアベレージを残すことができる選手を最強打者と考える傾向にあり、主に四番打者を任せるというのが定石とされてきました。

典型的な打者としては、本塁打数の世界記録を打ち立てた巨人で活躍した王貞治氏や、両リーグで本塁打王に輝いた落合博満氏などがいます。

一方、メジャーリーグでは、パワーヒッターの存在はそれほど珍しくないことから、走攻守の全てを高いレベルで備えている選手が最高打者であると考えられており、代表的な選手としては長年ニューヨーク・ヤンキースで活躍したバーニー・ウィリアムズ氏などが該当します。

近年ではデータ野球が浸透し、セイバーマトリクスと呼ばれる指数によって選手の実力が示されるようになっているのですが、その指数も本塁打数や打点以外の様々な要素を考慮して算出されるため、一概に長距離バッターが最強打者となるわけではありません。メジャーの最強打者は、走塁レベルも高いことから、日本と異なり任される打順も四番ではなく三番であることがほとんどです。

ただし、この傾向は近年では変わってきており、より攻撃的なラインアップを組んで大量得点を狙うために、最強打者を二番に配置するというチームも増えてきています。

バッターボックス

ポスティングシステムとは

野球

ポスティングシステムとは、日本プロ野球の選手がアメリカのメジャーリーグへ移籍する際に用いられる制度のことを指します。

この制度は、NPB所属選手がメジャーリーグ球団と直接契約を結ぶのではなく、まず所属球団が選手の交渉権をMLBに提示し、興味を持った球団が交渉に参加する仕組みです。

選手が移籍に成功すると、所属球団は一定の移籍金(ポスティング料)を受け取ることができます。

ポスティングシステムの起源は1998年にさかのぼり、日本の投手・伊良部秀輝選手がMLB移籍を希望した際に生じた問題を契機として制定されました。当時は、選手の希望と所属球団の意向が一致せず、トラブルが発生するケースが少なくありませんでした。

これを受け、NPBとMLBの間で合意の上でポスティングシステムが作られました。この制度は、選手と所属球団、そしてMLB球団のすべてが利益を得られるように設計されています。

ポスティングシステムの最大のメリットは、NPB所属選手がMLBで活躍する機会を得られることです。特に、海外挑戦を希望する選手にとって、この制度はキャリアを広げる大きなチャンスとなります。

選手にとっては、自分の実力を世界最高峰の舞台で試すことができるだけでなく、メジャーリーグという大きな市場で名声を得る可能性が広がります。

さらに、ポスティングシステムはNPB球団にとってもメリットがあります。優れた選手をMLBに送り出すことで、所属球団は移籍金(ポスティング料)を獲得できます。

この資金は、球団の運営やチーム強化、新たな選手の育成に活用されることが多いです。また、MLBで成功を収めた選手が母国に戻った際、その知名度がNPBの人気向上にも寄与します。

一方で、ポスティングシステムにはいくつかのデメリットも存在します。まず、選手側にとっては、移籍の自由が完全に保証されていない点が挙げられます。

ポスティングシステムを利用するためには、所属球団の許可が必要であり、球団が選手の移籍に同意しない場合、選手はMLBへの挑戦の機会を失う可能性があります。

また、球団が移籍金を重視するあまり、選手の希望を優先しないケースもあります。

さらに、MLB球団側にとっても、この制度には負担が伴います。ポスティング料は契約金とは別に支払う必要があるため、選手獲得にかかるコストが増加します。

このため、一部のMLB球団は財政的な理由から、優秀なNPB選手の獲得を断念せざるを得ない場合があります。結果的に、選手の移籍が限られた球団間で行われる傾向が強まるという課題があります。